かつてKeychronは、無線接続とメカニカルスイッチの組み合わせ、さらにはHot-Swap機能を搭載したキーボードを市場に投入し、業界に新たな潮流を作り出しました。
これにより、ユーザーは自分の好みに合わせてキースイッチを簡単に交換できるようになりました。
しかし、2023年現在、この「無線・メカニカル・Hot-Swap」の組み合わせは、もはやKeychronだけの特徴ではなくなっています。他の多くのメーカーもこれに追随し、競争は激しさを増しています。
2023年のキーボード業界の変革
たとえば、今年、REALFORCEは革新的なゲーミングキーボード「GX1」をリリースし、市場に衝撃を与えました。
GX1は、静電容量無接点方式を用いており、入力感知までの深さをユーザーが調整できるAPC機能を搭載しています。
これを応用することにより、押下の深さによって異なる入力を生成することが可能となり、これまでのメカニカルキーボードでは実現不可能だった機能を提供しています。
しかし、REALFORCE GX1だけが話題の中心ではありません。Keychronもまた、磁気検知センサー(HEセンサー)を搭載した新しいキーボード「Q1 HE」を発表し、注目を集めています。
このHEセンサーを用いることで、アクチュエーションポイントを自由自在に変更することが可能となり、ゲーミングからタイピングまで、あらゆる用途に対応できるカスタマイズ性を提供します。
REALFORCE GX1とKeychron Q1 HEの違い
項目 | REALFORCE GX1 | Keychron Q1 HE |
---|---|---|
接続方式 | 有線のみ | 有線 / Bluetooth / 2.4Ghz無線接続 |
キースイッチ | 静電容量無接点 | 磁気検知センサー (HEセンサー) |
キーレイアウト | 80% テンキーレス | 75% コンパクトレイアウト |
筐体の材質 | スチールフレーム | アルミニウム |
APC機能(可変アクチュエーションポイント) | あり | あり |
キーキャップ材質 | PBT | PBT |
バックライト | RGBバックライト搭載 | 未公開 |
価格帯 | 33,000円 | 未公開(ただしQ1 Proが199ドルであることを考えると、200ドル以上=3万円以上になると思われる) |
重要な特長 | 入力感知までの深さを調整できるAPC機能。非常に高い耐久性と品質。 | アクチュエーションポイントを自由自在に設定可能。USBドングルを用いた無線での接続にも対応。 |
2023年のゲーミングキーボード界は、メカニカルスイッチやオプティカルスイッチといった従来のキーボードの牙城が崩されつつある年と言えます。
そして、REALFORCE GX1の静電容量無接点方式に対して、もう一つ新しくメジャーになりつつあるのが「磁気検出センサー」です。
磁気検知センサー(HE)
2023年のキーボード界のキーワードでもある、「磁気検知センサー」(HEセンサー)。
これは読んで字のごとく、磁力を検知するセンサーのことです。
ちなみに、HEというのはホールエフェクトの略で、磁力を検知するセンサーには昔から用いられている技術です。
個人的に身近なところでは、MacBookの開閉を感知するセンサーがホールエフェクトセンサーです。
Keychron初のHEセンサー搭載機
見慣れたQ1の外観ですが、中身の構造は大きく異なります。
機種の名前は「Keychron Q1 HE」。
名前の通り、HEセンサーに対応したキーボードです。
詳細はまだ明かされていませんが、キースイッチ自体がMagnetic Switchとなっており、従来のメカニカルスイッチは使用することができません。
調整可能なアクチュエーションポイント
HEセンサーの画期的な機能の一つ、アクチュエーションポイントの変更です。
調整可能な作動ポイント
https://www.keychron.com/pages/keychron-q1-he-wireless-custom-keyboard-with-magnetic-switches
各キーのスイッチを作動させる距離を決め、ゲーミングには短い作動距離を、タイピングには長い作動距離を、ニーズに合わせて設定できます。
REALFORCEのキーボードには以前からAPC(アクチュエーション・ポイント・チェンジャー)という機能が搭載されていましたが、HEの普及によってこれが他社にも実現可能になりました。
メカニカルキーボードでは、スイッチごとにアクチュエーションポイントが決まっており、変更するにはスイッチを交換するしかありませんでした。
例えば「ゲーミング用途のために銀軸を選択すると、アクチュエーションポイントが浅すぎるためにタイピング用途には使い辛い」といったことが発生しますが、これを自在にコントロールすることができるということですね。
ダブルアクション
アクチュエーションポイントを自在に変更できるということは、裏を返せば「キーがどの程度押し込まれているか、常に確認することができる」という意味でもあります。
これを活用することで、「1つのキーを押す深さによって、入力内容を切り替える」ということが可能になります。
例えば、多くのゲームにおいてキャラを前進させる「W」のキーを浅く押すと歩く、深く押すと「Shift+W」が入力されてダッシュする、という使い分けが可能になるといった具合です。
いよいよハードウェアチートじみてきますが、カスタムボタンが20個あるゲーミングマウスみたいなもので、使いこなすことで優位に立てるハードウェアになると思われます。
2.4Ghzドングル対応で遅延も少ない
これまでのKeychronキーボードは、有線とBluetoothでの接続が可能でした。
ゲーミングキーボードとしては、Bluetoothの遅延が致命的になります。
一方、ゲーミングを意識している「HE」では、USB無線による2.4Ghz接続に対応しています。
しっかりと抜かりないスペックを実現していますね。
Hot-Swapにはおそらく非対応?
HE(磁気エフェクト)スイッチになった関係で、従来のメカニカルスイッチを装着できないはずです。
従来のHot-Swapソケットを搭載したPCBではない点には注意が必要です。
以前のKeychron Optical switchのシリーズでは、同じ機構を持つOptical スイッチ同士であればスイッチ交換が可能でしたが、Magneticスイッチの場合はどのようになるか、2023年10月時点ではわかっていません。
その他のスペックはQ1準拠
低遅延のUSB無線やHEセンサーなど、ゲーミングを意識したスペックを搭載しつつも、
ガスケットマウントやQMK/VIA対応など、従来のハイスペックマシン「Keychron Q1」の良い点はほぼ引き継いでいます。
Keychronの意欲作
当初は、メカニカル・無線・HotSwap・Mac対応 というのがKeychronのアイデンティティでした。
時は流れ、中華メーカーを中心に、同じようなスペックのキーボードを作るメーカーはたくさん増えてきています。
そんな中、かつてキーボード業界に新風を巻き起こしたKeychronの意地が見れることが、今から楽しみです。
REALFORCE GX1とKeychron Q1 HE、これらのキーボードはそれぞれ独自の特徴を持っていますが、どちらも2023年のキーボード業界に大きな影響を与える製品となりそうです。
今後の動向に注目が集まります。
Keychron Q1 HEは、2023年10月からKickStarterで出資募集開始、2024年1月に発送予定とのことです。
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