分割キーボードは腕・肩を自然な姿勢に保つことができて、身体に優しい。
ということで、これまで2台の分割キーボードを試し、「分割であること」以外の部分の機能性に満足できずに挫折してきた。
例えば、キーリマップの変更ができなかったり、
左右分割であるが故にキー配列が変態配列すぎて対応できなかったり。
そんな中、Filcoから発売されたMajestouch Xacro M10SPという分割キーボード。
何やらキーボードを分割した真ん中部分に、Mキーが10個並んでおり、好きにカスタマイズして使えるとのこと。
今回Amazonブラックフライデーで安くなっていたので購入してみた。
使ってみた感想を紹介する。
分割キーボードに期待していたこと
- 分割キーボードとして、肩を開いた状態で使用できて身体への負担を減らすことができる
- キーのリマップができる
- とりわけ、バックスラッシュのキーをバックスペースにしたい
- Fnキーの位置を変更したい(スペースバーの左)
- 60%または65%の英語配列
- MacでもWindowsでも使える
- あわよくば持ち運べる(金属の重厚な筐体はNG)
- 分割キーボードといっても、あまりに変態配列ではなく、あくまで普通のキーボード配列をベースにしていること
よかった点
- 分割キーボードとして必要十分な機能性とキー数を備えていて、60%配列をベースとした程よいキー数。内側に配置されたマクロキーの数をカウントすると65%サイズになる。
- ソフトウェアはWindows用のみ提供されているが、ハードウェアマクロ機能を使えばMacでもカスタマイズして使える。 (説明書には、Macで使えるとは明言されていない)
- ハードウェアマクロとソフトウェアカスタマイズの併用は「同時に書き込むのでなければ」可能。
- ハードウェアマクロの機能でリマップした内容と、ソフトウェアで書き込んだマクロは、共存させることができる。
- カスタムソフトウェアを使うことで、キーの一部リマップやマクロの設定、一連のキー入力を録画して再現する機能が使える。
例えば、PCのログインパスワードを覚えさせておけばワンボタンでパスワード入力を行うことだって可能。セキュリティのかけらもないが。 - 例えば、ソフトウェアで特定の文字列をワンキーで入力するようなマクロをMキーにセットしておきながら、ハードウェア機能を使ってバックスラッシュキーをバックスペースキーに変更すると言った具合である。ソフトウェアでのカスタムとハードウェアマクロは「同時に書き込む」ことができないだけで、「書き込んだ結果」は共存するということ。ソフトウェアでのカスタマイズとハードウェアマクロ両方の設定が併用できる。
- このキーボードのハードウェアマクロ機能は、「通電していればとりあえず設定できる」のが強み。すなわちUSB-Cポートを搭載したiPadやiPhoneでキーボードを使う場合にも、専用のソフト無しでもキーのリマップが利用できる。
ある意味では、PCを持たない層にも使える設計であるとも言えるが、PCを持たない層は分割キーボードを買わない。 - このキーボードを使って打鍵していると、内側に配置されているマクロキーを誤タイプしてしまうのではないか?と不安があったが、実際にはあまり気にならない。
微妙な点
- PCと接続するためケーブル差し込み口が狭く、サードパーティでは刺さらないケーブルがある
- 左右のキーボードの間を繋ぐケーブルが専用品となっていて、より長いケーブルや短いケーブルのオプションが使えない。実際に手元のケーブルで試してみたが、右側ユニットの起動が完了せず、使うことができなかった。純正ケーブル自体は硬く、取り回しが悪い。
- Mac用のソフトウェアがないため、Macで使いたい場合はハードウェアマクロのみで設定を行う必要がある。
- Hot-Swap対応ではない。
→Cherry MXは信頼と実績はあるがいかんせん設計が古い
→HHKB Studioのリニアスイッチが革命的すぎるのでスイッチ交換したいが、HotSwap対応していない - キースイッチの選択肢がCherryのみ
- 付属のケーブルがUSB-A to Cのみ。USB-Cのみを搭載したPCと接続するなら、変換アダプタが必要。
- キーキャップのバリが目立つ。若干チープな作り
使いこなすコツのようなもの
- DIP11でハードウェアマクロのON・OFFを切り替えながら使うのが良い
例えば、DIP11をオンにした状態では、「Fn+Ctrl」を長押しするとプログラムモードに入ってしまう。Excelなどを操作しているとCtrl+矢印 を多用するが、矢印はFn+IJKLなので、結果的にCtrl+Fn+IJKLということになり、プログラムモードが暴発してしまう。
設定を一度書き込んだら、DIP11をオフにして、設定を上書きしないようにすることで、不意にプログラムモードに入ってしまうことを防ぐことができる。 - DIPスイッチはキーボードをPCから取り外してから切り替えよう。説明書にエクスクラメーションマーク付きで警告されている。これはきっと守らないとヤバい。
- DIPスイッチの数は多いが、説明書にはどのスイッチをどうセットすればどのようになるか図示されている。めげずに説明書を読んで、自分の好みの配列を探そう。
- カスタムソフトウェア(Filco Assist)の起動中はハードウェアマクロ設定機能が封印される。(封印されていない時は「Fn+Ctrl長押し」で設定モードに入るが、ソフトウェアが起動している状態のPCにつながっていると、この操作をしても設定モードには入らない)
- キーのリマップという面でみると、ソフトウェアはだいぶ制限がある。例えばバックスラッシュのキーをバックスペースにするような設定は、ソフトウェアでは実施ができなかった。その代わり、ソフトウェアを終了した状態でハードウェアマクロ機能を使って、バックスラッシュのキーに対してバックスペースを割り当てることができた。
- ハードウェアマクロとソフトウェアカスタマイズでは「できることが違う」のであって、どちらかが上位互換というわけではない。
僕のカスタマイズ例
- バックスラッシュをBackSpaceに変更(ハードウェアマクロで設定)
- Nの横のM9キーに「B」をアサイン(ハードウェアマクロで設定)
- CtrlとCaps Lockを入れ替え(DIPスイッチで設定)
→DIP9でCapsLockをFnに変更することも可能だが、僕はしていない - 左ユニットのスペースバーの左のキーをFnキーに変更(ハードウェアマクロで設定)
- BackSpaceキーにはアクサングラーブ(`)をアサイン。シフトと同時押しで波ダッシュ(〜)が入力できる(ハードウェアマクロで設定)
- 左手側、M5キーには「Ctrl+Alt+V」のマクロをアサイン。仕事柄、Officeの「形式なしペースト」をよく使うため。(カスタムソフトウェアで設定)
おすすめできるか?
個人的には、「取り組む価値のあるキーボード」だと感じた。分割キーボードを試したい人にはおすすめできる。
カスタムソフトウェアやハードウェアマクロでの設定変更は癖があり、目的に応じて設定方法を考えないといけないという手間がある。
しかし、一度手間をかけてしっかり設定してしまえば、そのあとは自分の直感に従った入力が可能で、左右分割キーボードとしてのメリットを享受することができる。
以前に試したMistel Baroccoという分割キーボードは、キーマップの変更がハードウェアマクロによるキー操作しか実施できない上、設定幅もあまり広くないため自分好みの配列に変更することができなかった。
その点、柔軟なキーマップの変更に対応しているのはありがたい。
また、キースイッチが交換できない点についても、Cherry MXスイッチはそこまで悪いものではないし、気にする人の方が圧倒的に少ないだろう。
高機能な分割キーボードとして、必要十分な機能性を持っている。
価格も20,000円前後ということで、決して安いものではないが、分割メカニカルキーボードという世界を覗いたことのある人なら、これが決して高額なキーボードには入らないことも理解できると思う。
以前に分割キーボードの「Keyboardio Model100」という変態配列キーボードに挑戦したことがあるが、あれはCtrlやShiftだけでなく、EnterやBackspaceに至るまで多くのキーが親指周辺に集まっており、とても習得できなかった。
一方で今回のFilco Majestouch Xacroはあくまで左右に分かれているだけで一般的な配列のままだから、入門用としてはピッタリだ。
分割キーボードの入門機として、じっくり向き合う価値のあるキーボードだと思う。
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