このページでは、メカニカルキーボードの初心者向けに、「リニア」「タクタイル」「クリッキー」といったスイッチタイプについて解説します。
リニア・タクタイル・クリッキー とは
- リニアは底打ちまでスーッと押下でき、底に行くほど徐々に(リニアに)重くなる性質がある。比較的静か
- タクタイルはカクッとした「押した感触」があり、一番人気
- クリッキーは「カチカチ」と鳴るパーツが組み込まれていて、音が大きい
この記事の内容
メカニカルキーボードを探していると、必ず出会う「リニア・タクタイル・クリッキー」というスイッチの選択肢。
それぞれの意味を理解しておかないと、せっかくのメカニカルキーボード選びに失敗してしまうかもしれません。
この記事では、リニア・タクタイル・クリッキーの違いと選び方を解説します。
在宅勤務でメカニカルキーボードを選ぶ人が増えた
在宅勤務(テレワーク)が一般的になり、
- 自宅の仕事環境をアップデートしたい!
- ついでにゲーム環境にも共有できるデスクにしたい!
- せっかくなら気になっていたメカニカルキーボードがほしい!
といった需要が増えています。
道具にはこだわるべき
仕事道具にこだわることで、仕事に向き合うテンションをアップしたり、効率化をはかることができます。
在宅勤務やゲームのパフォーマンス向上のために、もっとも長時間触っているキーボードは投資する価値があります。
デスクワークやゲームに投資するなら、「良いキーボード」を使うのがおすすめです。
メカニカルキーボードを使うメリット・デメリット
メカニカルキーボードを在宅勤務・仕事で使うメリットは以下です。
- 自分にあったキー(キースイッチ)を選択すると、打ちやすい
- 耐久性が高く、長期間使い慣れたキーボードが使える
- 好きなキーボードを使うと、気分が上がる
メカニカルキーボードを使うデメリットは以下。
- 一般的なオフィス用キーボードより、価格が高い
- 自分に合わないキースイッチを使うと、疲れたり腱鞘炎の原因になる
- 結果、自分に合うキースイッチを求めて沼の住人になる
メカニカルキーボードを使うデメリットである「スイッチ選びの失敗」を減らすために、基本的なスイッチの違いについて解説していきます。
メカニカルキーボードとは
キーボードのキー1個1個に「メカニカルスイッチ」と呼ばれる機構が使われているキーボード。
ごく一般的なPCのキーボード(メンブレンスイッチと呼ばれる)に比べて耐久性が高いのが特徴。
スイッチによって「打鍵音を演出する」「打鍵音を抑える」「打鍵が重い」「軽い」など、多様な特性をもつスイッチが存在する。
この記事を見ていただいている方は、「赤軸」「青軸」「茶軸」という言葉を聞いたこともあるかと思いますが、スイッチの種類を知っていると、自分にあったスイッチに出会える可能性が上がります。
スイッチ選びに失敗するとこうなる
- キーが軽すぎる、または重すぎてミスタイプが増える
- 打鍵音がうるさく、オンライン会議の相手や家族に迷惑をかけてしまう
- 指が疲れてしまったり、腱鞘炎になる
このように、せっかくキーボードを購入したのに快適に使用できるどころか、逆効果になってしまいます。
世の中のキースイッチは大きく3種類
今回は、スイッチを選ぶうえで最初に知っておくべき「リニア・タクタイル・クリッキー」といったスイッチタイプについてのお話です。
世の中のメカニカルスイッチはすべて、大きくこの3種類に分類できると言って差し支えないでしょう。
これらの違いを踏まえたうえで、自分にとって最適なスイッチを探しましょう。
きっと、あなたに合ったスイッチに出会えますよ。
キースイッチの構造を知る
キースイッチの構造を理解すると、ここからの話がわかりやすくなります。
キースイッチは、おもに下記の部品からできています。
- トップハウジング(上蓋)
- ステム(軸)
- スプリング(バネ)
- スイッチプレート(金属接点)
- ボトムハウジング(下部外装)
タクタイルとリニアの違いはここ
タクタイル軸は、打鍵したときの「カクッ」という感触を演出するために、ステムに若干の突起があります。
茶色いステム(タクタイル軸)の方に、ちいさな出っ張りがあるのがわかるでしょうか。
この出っ張りが内部で擦れることによって、タクタイル軸の感触が生まれます。
ちなみに茶軸のステムにベトベト付着しているのがルブ(潤滑油)です。
クリッキーの音が出る仕組み
クリッキータイプのスイッチには「リーフ」と呼ばれる「カチカチ音を出すための金属パーツ」が入っています。
スイッチを押したとき、軸の部品によってこのリーフが押され、弾かれることによってカチッという音が鳴るわけです。
クリッキースイッチの代表作は「青軸」ですが、
「青い軸の部分」からクリック音が出るわけではなく、別の部品で音が出ているんですね。
ちなみに、このカチカチ音を出す方式にも複数の種類があり、より大きな音が鳴る「クリックバータイプ」という方式もあります。
3種類のスイッチタイプの詳細
「スイッチタイプ」には以下の3種類があります。
- リニア(なめらかに底まで沈み込む)
- タクタイル(入力したことがわかるよう、カクっという感触がある)
- クリッキー(入力したことがわかる感触と同時に、カチッという音が鳴る)
当ブログで取り上げているKeychronも、この3種類のスイッチをラインナップしていますね。
どれが一番静か?
基本的には、リニア→タクタイル→クリッキー の順で静かです。
ただし、それはあくまでもメカニカルスイッチの中では静かというレベルであって、リニアスイッチでも硬質な音が鳴るものが多く、日本のオフィスでは使いにくいものが多いです。
静音加工されたスイッチもある
オフィスで使いたい場合は、静音加工の施されたスイッチを選択するのが良いでしょう。
スイッチ内部で部品がぶつかる地点に、クッション素材が使われているため打鍵音がマイルドになります。
底打ち音を軽減したサイレントタイプのスイッチも製造されています。(Cherry MX Silent Red など)
静かなキーボードが欲しい方は、サイレント軸を選択するのがおすすめです。
AmazonでもEPOMAKER Sea Salt のようなサイレントリニアスイッチが購入できます。
リニアスイッチ
リニア軸は、押し下げるほどに反発が徐々に(リニアに)強くなる軸です。
現在のメカニカルスイッチの元祖とも言えるCherry社の「Cherry MX Red」が最も有名なリニアスイッチといえます。
その影響か、赤色の軸を使用しているものは、どのメーカーでもリニア軸が多いですね。
リニア軸は静かなのか?
メカニカルキーボードの中では静かな部類です。
ですが、一般的なメンブレンキーボードよりは普通にうるさいです。
リニアスイッチの音はこんな感じです。↓
海外のサイトなどで、「リニア軸はオフィス用途でもOK!」みたいなことが書かれていたりしますが、日本のオフィス環境ではキツいと思います。
おすすめのリニアスイッチ
おすすめのリニアスイッチはEVERGLIDE AQUA KING です。
おすすめする理由は下記。
- 価格が比較的安い
- ルブ済みで、そのまま取り付けて快適に使える
- 押下圧が3種類(55,62,67g)から選べる
- 透明でバックライトを綺麗に透過できる
打鍵音も打鍵感も上質感があり、とても気に入っているリニアスイッチです。
実際にAqua Kingを使って組んだキーボード動画です。
タクタイルスイッチ
タクタイルスイッチは、押し下げる途中で「カクッ」という軽い抵抗感が設定されているものです。
カタカタと心地よい打鍵感で、根強いファンが多いタイプです。
Cherry社の「Cherry MX Brown」が最も有名なタクタイルスイッチで、「世界一のメカニカルスイッチ」と名高いスイッチになっています。
→タクタイルスイッチを採用したロジクールのキーボードレビュー
タクタイルは「打ってる感」を得られる
このスイッチの特徴は、入力したことが分かりやすい感触となっていて「いまキーボード打ってるなぁ~」ということを感じられる点です。
心地よい打鍵音をもつスイッチが多いのも特徴ですね。
迷ったらまずはタクタイル軸から始めるのが良いです。
タクタイルにもさらに細かく種類がある
タクタイル軸の中にも多くの種類がつくられていて、特徴のひとつは「タクタイルの山がどこにあるか」の違いがあります。
「カクっ」となる感触が発生する位置が高い(押し始めに近い)ものと、
低い(押し込んだところに近い)ものがあるわけです。
タクタイルの山が高い位置にあるものは「アーリータクタイル」と呼ばれ、サクサクとした独特の打鍵感があります。
たとえば、Holy Panda Xはアーリータクタイルに分類されます。
有名なタクタイルスイッチのひとつで、すごく良い音がするのでぜひ聴いてみてください。
クリッキースイッチ
クリッキー軸は、文字通り「クリック」感のあるスイッチです。
Cherry社の「Cherry MX Blue」が最も有名なクリッキースイッチですね。
あまりにも有名なクリッキースイッチで、一般的に「青軸」と呼ばれます。
打鍵すると「カチカチ」といった音が出る機構が内蔵されています。
打鍵されたことがわかる「感触」を演出するだけでなく、わざわざ「音」を出す機構が仕込まれているということです。
タイピングしていると非常に音が大きいので、他の人が居る環境で使うのには向きません。
タイピング時に必然的に発生する音に加えてわざわざ音を出しているわけなので、周囲への配慮は必須です。
一人で家で使うものだと思ったほうが良いでしょう。
しかし、タイピングしている感を強く感じられるため、根強いファンがいます。
クリッキースイッチ実用面でのメリット
実際の使用におけるメリットとしては、
入力したことがはっきりわかる必要のあるゲームなどで
タイミングがつかみやすくなり、ゲームが有利になったりします。
クリッキースイッチの音は下の動画で聴いていただけます。
基本の3種を軸に、様々な種類が製造されている
メカニカルキーボードのスイッチは、上述の3種類のタイプに大別されます。
そこから、さらに細かく特徴が異なるスイッチが無数に製造・販売されています。
たとえば、
リニアタイプでバネがものすごく強いものや、底打ちの音を抑えて静音仕様になったもの。
タクタイルのスイッチでも、静音化の処理が施されているものや、アーリータクタイルのようなスイッチ。
クリッキー軸で、1回の押下で2回クリック音が鳴るもの。
などなど、さまざまなスイッチが発売されています。
各社が常に新しいスイッチを開発していますが、いずれも「リニア・タクタイル・クリッキー」のどれかに当てはまります。
まずはスイッチタイプの違いを把握して、だいたいこんな感じのスイッチなんだなということを把握すると、購入時の参考にすることができます。
Amazonで購入できるキースイッチ
今では、日本のAmazonでもいくつかのスイッチを購入することができます。
オススメは下記のスイッチです。
リニアスイッチ
メカニカルスイッチの定番、GateronのキースイッチもAmazonで購入できる時代になりました。
価格が比較的抑えめで品質も問題ないので、ひとまず手軽に買って試したい場合におすすめです。
タクタイルスイッチ
コストパフォーマンスが抜群なEPOMAKERのスイッチも、Amazonで購入することができます。
小気味良いタクタイル感があるわりに、潤滑剤を塗布しなくてもなめらかに打鍵できるので、価格のわりに満足度が高いタクタイルスイッチです。
クリッキースイッチ
正直、クリッキースイッチをわざわざ選択するメリットは、オフィス用途においてはあまりありません。
本当に打鍵音のよいキーボードに出会ってしまえば、スイッチから出るクリック音は必要ないからです。
ただし、ゲームなどでは入力のタイミングをしっかりと掴みやすいクリッキースイッチが重宝されることもあるので、ゲーム用途で考えている方はGateron Blueから入ってみると良いでしょう。
最初からクリッキースイッチが搭載されていて、Hot-Swap対応のキーボードを選ぶと良いですね。
スイッチ交換を楽しむなら、Hot-Swap対応の機種を選ぼう
メカニカルキーボードを選ぶなら、ホットスワップに対応した機種を選んでおくことで、購入後にスイッチを変更することが一気に簡単になります。
最近ではホットスワップ対応の機種も購入しやすくなったので、ぜひ検討してみてください。
KeychronやDucky One 3などが対応しています。
メカニカル以外のスイッチ
メカニカルスイッチのような見た目でありながら構造が全く異なる「静電容量無接点方式」や「光学(Optical)スイッチ」というものもあります。
光学スイッチや静電容量方式はメカニカルスイッチよりも耐久性が高いなど利点もありますが、メカニカルスイッチの方が歴史が長く、対応製品が多いです。
光学スイッチを採用したキーボードとして、有名なのはRAZERのゲーミングキーボードでしょうか。
入力速度が要求されるゲームを有利に進めるためのキースイッチになっています。
光学スイッチは「光を感知して入力信号を受け取る」方式で、このスイッチの場合も「リニア・タクタイル・クリッキー」といった感触が設定されています。購入時に確認してみてください。
→無限に使える?Varmilo 静電容量 メカニカルキーボード レビュー
→Keychron K12レビュー。Opticalスイッチとは?
メカニカル以外で、ゲームに向いているスイッチ
さまざまなゲーミングキーボードが発売されていますが、仕組み上もっともゲーミングに向いているのは「オプティカル」または「静電容量スイッチ」です。
メカニカルも良いのですが、どうしても物理的な制約で劣る部分も出てきます。
オプティカルスイッチ
例えば、RazerのHuntsmanなどに採用されているスイッチです。
原理的に、入力に対する反応速度が速くて壊れにくい構造になっています。
オプティカルスイッチの中にも、リニアタイプとクリッキータイプが用意されています。
静電容量無接点方式
ゲーマーに根強い人気があり、オフィス用途にも絶大な人気を誇っているのがREALFORCEです。
こちらはメカニカルキーボードではなく、静電容量無接点方式といって、電気的な接点を持たない構造になっていて理論上は最高の耐久値を誇るキーボードです。
2022年にはホロライブの凄腕ゲーマーである「獅白ぼたん」さんが採用したことでも話題になったキーボードですね。
こちらは入力に対する絶対的な信頼性と耐久性が支持されている理由です。少々お値段は張りますが、ほんとうに一生使えるレベルのキーボードになっています。
このタイプのスイッチは軽いタクタイルスイッチに近い感触を持っていて、感触は選ぶことができません。ただし柔らかくもサクサクとした打鍵感は、多くのユーザーに人気があります。
静電容量メカニカルスイッチ
メカニカルと静電容量スイッチの両方の良い点を併せ持つスイッチとして、Varmilo(アミロ)の静電容量メカニカルスイッチがあります。
こちらはふもっふのおみせで購入することができ、デザインも豊富なのが特徴です。
デザイン性が高く高機能なゲーミングキーボードを探しているなら、一見の価値があります。
リニアタイプの「桜」や「ローズ」「ジャスミン」といったスイッチ、タクタイルの「アイリス」
クリッキーの「グリーン」スイッチなどから選択でき、いずれも滑らかな打鍵感が得られます。
HHKBはどのタイプに近い?
HHKBは、REALFORCEと同じく
メカニカルキーボードとは違う仕組みの「東プレ 静電容量スイッチ」を搭載しています。
スイッチとはいいつつも、個別にスイッチが取り外せるわけではありません。
そもそもメカニカルキーボードではないので比較するのは難しいのですが、
REALFORCEと同じで、使用感としては軽いタクタイルスイッチに近いと思います。
比較的静かで柔らかめの打鍵感です。
→HHKB Professional Hybrid Type-s レビュー
HHKBはこんな音です。↓
複数キーボードを持ってもいいじゃない
市場には無数のスイッチがあります。
自分にとって最高に気持ちよく打鍵できる理想の一品が必ずあります。
たった1つのベストスイッチを探し求めるのも良いでしょう。
ですが
ぼくは敢えて、複数キーボードを持って、使い分けることをオススメします。
実際、ぼく自身もリニア・タクタイル・クリッキーのキーボードをそれぞれ気分や用途で使い分けています。
- オンライン会議のときはリニア
- 一人で大量の文章を書きたいときはクリッキー
- クリッキーの音に飽きてきたらタクタイル
- オフィスでは静電容量無接点(HHKB)
人間は「飽きる」生き物だから
人間はかならず「飽きる」生き物です。
狩猟採集時代から、
「同じこと」を「同じ場所」でずっとやっていた人類は、迫る危機に対応できず滅んだ。
一方で、「飽きたら移動」したり「食べるものや狩り場をころころ変える」ことで危機を回避してきた人類が、子孫を残してこれた。我々はそういう特性の人類の子孫である。
ということで、基本的に我々の脳は「新しいもの」に魅力を感じるようにできています。
飽きることこそが、生存戦略だったからです。
キーボードだって同じです。
2〜3台のキーボードを使い分けて気分で取り替える方が、
最終的に「それぞれの良さ」を感じ取りやすくなります。
リニアを使っていて、久しぶりにタクタイルに替えると
「サクサク打ってる感があって楽しい〜!」と感じますし、
その後クリッキースイッチを試すと「小気味良いカチカチ感が気持ちいい〜!」となり
さらにリニアに戻すと「滑らかで上質な打鍵感、素敵・・・!」となります。
要は「全部使えば、全部楽しい」ということです。
まずはタクタイルから試してみて、リニアを触ってみて、
最後に気分転換でクリッキーを試すのがおすすめです。
キーボードテスターを使用すれば、キースイッチの音や感触をいろいろ試すことができますので気になる人は購入してみても良いですね。
交換用スイッチも手に入りやすくなってきましたし、Amazonでは安価なメカニカルキーボードも出回っています。
ちょっと試したいならこういうキーボードを試すと良いでしょう。
Hot-Swap対応のキーボードなら、スイッチ交換も簡単です。
ぜひ、あなたに合ったスイッチを探してみてください。
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