2022年6月、Logicoolが満を辞して発売したメカニカルキーボード、MX Mechanical MINIは、メーカーの事情で当初の予定より若干遅れて発売開始されました。
同社のフラッグシップキーボードの「MX」ラインで初めてとなるメカニカルキーボードです。
メカニカルキーボードとしては一般的な3種類のスイッチから選択することができます。
しかも今回タクタイル軸では「サイレントタクタイル」を採用しているとのこと。
今回は、サイレントタクタイルということで茶軸を選択しました。
実際に使ってみた感想を書いていきます。
MX Mechanical MINI レビュー
基本性能
基本スペックは以下の通りです。
- 75%テンキーレス配列
- Low-Profileメカニカルスイッチ(茶軸はKailhスイッチでした)
- USB-C充電式
- Logi Boltレシーバー対応
- Bluetooth接続も可能
- 有線接続には非対応
このキーボードは、以前にロジクールが出していたフラッグシップキーボードであるMX MINIのメカニカル版です。
乾電池式ではなく、USB充電式であるため充電の手間がありそうですが、バックライトオフで最大10ヶ月、最低でも15日は使用できるとのこと。
有線での接続には対応せず、Logi BoltレシーバーまたはBluetooth接続で使用します。USB-Cポートは充電専用です。
レシーバーとBluetoothで合計3台までペアリングすることができ、箱から出した時点ではレシーバー+機器1の組み合わせでペアリングされていました。
キーキャップはABS樹脂で、白いプラスチックにグレーの塗装が施されている構造。バックライトを透過するので暗いところでも文字が見えます。
Kailh Low-Profileスイッチ
ぼくが選択したのは「サイレントタクタイル」というで、
おそらくKailh Chocスイッチの十字ステムタイプです。
ロジクールは「サイレント」を謳っていますが、メーカー側のページには特に静音処理が施されている情報は見当たりません。
ただし、Low-Profile=背の低いスイッチなので押し込む際の距離が短くなる関係で、打鍵音は小さめになる傾向があります。
実際、スイッチだけの音はほとんど気になりません。
接続の安定性はさすがのロジクール
2.4Ghzのドングルは一般的にBluetoothよりも低遅延で接続安定性も高いですが、それでもUSB3.0のケーブルなどが近くにあると干渉してしまう場合があります。
Logicoolの新しい規格である「Logi Bolt」は、よりノイズに強い次世代ワイヤレス接続技術ということで、実際に使ってみても非常に安定していると感じます。
とくに、ウチでは無数の無線キーボードを使っているので、前世代のUnifyingレシーバーだと干渉してマウスの動きが悪くなる時なんかもありましたが、Logi Boltではそういったことは起きていません。
Bluetoothの接続は普通のものですので、環境的にBluetoothで問題ないのであればそちらを使っても良いでしょう。
ロープロファイルの宿命
Low Profileキーボードの宿命として、キートップが平らになりがちという弱点があります。
通常、多くのメカニカルキーボードで採用されるCherry ProfileやASA Profileといったキーキャップ形状の場合、キートップは指の動きに沿う形でカーブを描いています。
ステップスカルプチャー構造 とも言われるこの形状によって、「打鍵する時に自然な位置にキーがあり、少ない運指で打鍵ができる」という感覚につながっているわけです。
一方、Low-Profileキーボードの場合はほとんどこういった形状がなく、キートップ全体のシルエットはほぼ平らな形状をしています。
ノートPCのキーボードしか打たない方にとっては問題がないのですが、ステップスカルプチャー構造のキートップに慣れている手では、この平らなキートップ形状は非常に「キーが遠く」感じます。
このため、どちらに慣れるかによってかなり打鍵感の好みは変わってくると思います。
Cherry Profileなどの形状に慣れている方ほど、このギャップに苦しむことになります。
ちなみにキー荷重は結構重め
Low-Profileのもう一つの宿命として、キーキャップが薄くて軽いのと内部のバネが短いため、スペック数値よりもキー荷重が重く感じられます。
たとえば僕の場合、通常プロファイルでのキー荷重は50gf前後が好みなのですが、このKailh Chocは45g±10gfでも重く感じます。特に力を入れにくい小指や薬指の担当キーではその傾向は顕著で、パームレストに手首を乗せたまま指だけで打鍵するのは厳しいと感じました。
腕全体を動かして、ノートPCみたいに打鍵する方向きなのだと思います。
キーキャップはあまり良くない
キーキャップは、ABS樹脂に塗装が施されている簡素なものです。
もともと高級キーボードメーカーではないので別にかまわないのですが、キーキャップの材質が軽く薄いせいで、打鍵音がうるさくなる傾向があります。
実際同じLow-ProfileのNuphy Air75と比較しても、キーキャップの厚みが違う分、Nuphyの方が打鍵音は静かに聞こえます。
光を透過するので見た目は悪くないのですが、仕様としては微妙な感じです。
MacとWindowsの切り替えについて
Logicool MX Mechanicalでは、ほかのロジクール製キーボードと同様に、Mac用の修飾キーも設定されています。
この設定は、基本的にペアリングを行った際に相手の機器を判別して自動的に行っているようです。
このため、「MacでセットアップしたLogi BoltレシーバーをWindowsに差し替える」ということをすると、Mac配列設定のままWindowsに接続されることになり、正常に使えないという事態が発生します。
Macでの配列とWindowsでの配列を正しく切り替えるには、3つのペアリングモードを使い分けて別の機器として登録してあげましょう。
USB切り替え機を使ってLogi Boltの接続先をMac/Winに変更しようとしている方は要注意です。
MacBook Airと組み合わせて尊師スタイルも可能
手元のM1 MacBookAirにMX Mechanicalを乗せてみると、いい感じにゴム足がキーボードと干渉せず、いわゆる尊師スタイルでの使用も可能です。
ただしキーボード自体に高さがあるため、Dockなどが配置されている画面の下部がちょっと見にくくなります。
あとTouchIDも封印されてしまうので、あえてこのスタイルで使う必要は無いかな。と思っています。
また、最新のM1 ProのMacBookProやM2 MacBook Airでは、キーボード最上段のキーのサイズが異なるため使用できないかもしれません。
専用ソフトでのカスタマイズ性
Logi Bolt対応製品は、従来の「Logicool Options」ではなく新しい「Logicool Options+」を使用します。
特にできることは大きく変わっていないようですが、少しインターフェースが洗練された感じはあります。
ここでカスタマイズできるのは、バックライトのパターンやメディアキーを含むいくつかのキーの設定になります。
たとえばメディアキーのどれかに任意のキーボードショートカットを割り当てることもできて便利なのですが、そのほかの修飾キーのキーマップを変更することはできません。
せめて、CtrlとCaps Lockの入れ替えぐらいは出来てもよかったんじゃないかなーと思っています。これはちょっと残念ですね。
便利なのは、スクリーンショットやマイクミュートなどのボタンが用意されていて、これらも任意に設定変更ができるところです。オンライン会議の時に咄嗟に画面をキャプチャしたり、マイクをミュートにすることがある方には使い道がありそうです。
道具としては流石の信頼度。メカニカルとしては惜しい
以前にこちらの記事で紹介したように、無線キーボードに欠かせない機能はまず「接続安定性」と「バッテリー持ち」だと思っています。
このロジクールのMX Mechanical MINIは、ロジクールの培ってきた無線キーボードの技術がしっかりと活かされており、上記の条件はクリアしています。
が、その条件で言えば完成度としてはメカニカルでは無い方のMX MINIでも同様であり、メカニカルにするのであれば打鍵感を左右するキーキャップへのこだわりがもう少し欲しかったという印象です。
あとは、せっかく信頼性の高い管理ソフトや無線接続が使えるので、このままキーアサインをHHKBやREALFORCE同様に自由に変更できる機能が搭載されてくれれば、一気に垢抜けると思います。
個人的には打鍵感とカスタマイズ性の面で、まだまだ初号機だなという印象です。
この間購入したNuphyの方が完成度としては高かったのかな、という印象です。
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