今年の 1 月に購入したノックス(Knox)のFLUCTというシステム手帳を、半年間使ってきました。
正直に言ってしまうと、この手帳には絶対的に必要な機能は何もありません。デジタルツールの方が効率的だし、安価な手帳でも十分事足ります。
とはいえ、このFLUCTには不思議な魅力があります。他の手帳を試してみることもあるのですが、毎回このFLUCTに戻ってきてしまいます。
今回は、なぜこの手帳がこれほどまでに人を惹きつけるのか、その魅力を詳しく解説していきます。
システム手帳とは
リングとリフィルの自由な組み合わせ
システム手帳は、金属製のリングにリフィル(紙のページ)を挟んで使用する手帳です。普通の綴じ手帳と違って、必要に応じてページを追加したり削除したりできるのが最大の特徴です。
そもそも僕がアナログの手帳を使い始めたのは、ここ2年ほどの話です。
最初は「ほぼ日手帳」の A5サイズ(カズン)という綴じ手帳を愛用していました。
その後、ちょうど1年ほど前にシステム手帳デビューしました。
システム手帳の良さは、自分の用途に合わせてリフィルを選択できることです。スケジュール管理用のページ、メモ用の方眼紙、アイデア整理用の無地ページなど、必要なものだけを組み合わせて自分だけの手帳を作れます。まるで手帳というツールを自分でカスタマイズしているような感覚になります。
FLUCTの魅力
16mmリングの絶妙なサイズ

FLUCTのリング径は16mmです。これは決して大きなサイズではありませんが、小さすぎることもありません。
システム手帳の世界では、ヘビーユーザーが24mmや30mmといった大口径のリングを使うこともあります。
大口径のリングなら、大量のページを挟むことができます。スケジュールやメモだけでなく、人生設計や目標設定、読書記録、映画リストなど、あらゆる情報を一冊に集約できるからです。
しかし、僕の場合は16mm という中庸なサイズが気に入りました。必要なものは十分に挟めるし、持ち運びも苦になりません。
毎日の出社にも持参できるサイズ感で、実用性と機能性のバランスが絶妙だと感じています。
24mmリングだと左右ページがやや離れてしまうのですが、16mmであれば左右のページが近く、見開きで使いやすい点も気に入っています。
バイブルという王道サイズ

僕のFLUCTはバイブルサイズです。(ラインナップにはM6もあります)
バイブルとは、聖書のサイズのことです。システム手帳には主に4つのサイズがあります。大きい順に A5サイズ、バイブルサイズ、M6サイズ、M5サイズです。
この中で最もポピュラーでオーソドックスなサイズがバイブルサイズとされています。
僕は最初M6サイズから始めましたが、少し小さすぎました。次にA5サイズも試しましたが、今度は大きすぎて持ち運びに苦労しました。
結果的に、バイブルサイズが最も使いやすいことがわかりました。ページのメモスペースは十分に確保されているし、カバンに入れてもかさばりません。
またバイブルサイズは、リフィルの種類が豊富に展開されているのもメリットです。小さなサイズだと、どうしてもリフィルの選択肢が限られてしまうのです。
職人技が光る革製品としての魅力
財布機能まで内蔵した贅沢な構造

FLUCTの特徴的な点は、表紙部分に財布の機能が組み込まれていることです。これは、財布職人でもある村上裕宣さんが手作りで製作しているからです。
お札を入れるスペース、複数のポケット、さらにはジッパー付きポケットまで備えています。

僕自身は、これらの収納スペースをあまり活用していません。表紙がボコボコしてしまい、書き心地が悪くなる懸念があるからです。ただし、チケットを一時的に保管したり、ボールペンの替芯を入れておいたりする用途には便利です。
特に重宝しているのが、ボールペンの替芯を保管できることです。外出先で急にインクが切れても、すぐに交換できるのは安心感があります。
手縫いベルトの圧倒的な使い心地

FLUCTにはベルトタイプとフラップタイプがありますが、僕はベルトタイプを選択しました。このベルトが、地味ながら本当に素晴らしいです。
剣先ベルトと呼ばれるデザインで、先端部分は二重構造になっています。
この分厚い革のベルトは職人による手縫いで作られています。一針一針、職人が手で縫い上げているのです。
実際に使ってみると、ベルトの抜き差しが驚くほどスムーズです。他のシステム手帳では、ベルトが柔らかすぎて挿入しづらくて困ることがあります。
FLUCTのベルトは適度な硬さがあるため、気持ちよくスポッと挿入でき、抜く時もスムーズです。この使い勝手の良さが、僕が何度も他の手帳に浮気しようとしながらも、結局FLUCTに戻ってきてしまう理由のひとつです。
ペンホルダーの完璧な設計思想
もうひとつ、FLUCTで気に入っているのが長いペンホルダーです。多くのシステム手帳では、ペン先だけを挿すような小さなホルダーが付いているだけです。しかし、FLUCTのペンホルダーは、ほぼペン全体を覆ってしまうほどの長さがあります。
この長いホルダーには複数のメリットがあります。まず、安定感が抜群です。ペンがぐらつくことがありません。次に、抜き差しがしやすいことです。そして、普段使用していない時でも、ペンがしっかりと固定されています。
太めのペンにも対応しています。ジェットストリームの 4 色ペンのような太いペンでも問題なく収納できます。
他の手帳で試したアシュフォードの「ディープ」という比較的リーズナブルな手帳では、革が柔らかすぎてペンホルダーがヘニャヘニャしてしまい、使いにくかったのとは対照的です。
革の経年変化という楽しみ
ブルーム仕上げから始まる革の変化
FLUCTは購入時、表面がブルームに厚く覆われた状態で届きます。
触ると手に油分が付着し、ロウソクを触った後のような感覚になります。最初は少し違和感がありますが、これが革製品らしさを演出しています。
使い込んでいくうちに、このブルームが徐々に馴染んでいき、現在では結構ツヤツヤした状態になっています。購入当初の写真を撮り忘れてしまったのですが、商品ページを見ると白い粉のような物が付着している状態が確認できると思います。
表面のアラスカレザーは個体差が大きく、表情にバラツキがあるため、ネットで購入する際は想像していたものと異なる外観のものが届く可能性があります。
ただ長期間使用していると徐々に慣れてきますし、愛着も湧いてくるものです。
内側に使われたブッテーロレザーの上質感

外側にはアラスカレザーが使用されていますが、内側にはブッテーロという高級レザーが採用されています。こちらも牛革ですが、外側とは全く異なる表情を見せています。滑らかで、正統派の革という印象です。
つるっとした手触りの滑らかな革で、使い込んでいくうちに経年変化でクタッとしてきます。同時に、艶も出てきているのが確認できます。
この手帳を見ていて感じるのは、「本当に全体が革でできている」ということです。
多くの手帳では、台紙に革を貼り付けたような構造になっていることが多いのです。しかし、FLUCTは本当に革で組み上げられている感じがして、ガチの革製品だということがひしひしと伝わってきます。
他の種類の手帳では、ポケットの内側を覗いた時に台紙がチラ見えすることがありますが、FLUCTではそれがありません。革をめくっても、どこから見ても革という状態で、値段相応の品質だと実感できます。
クラウゼ社のゴールドリング

世界最高峰のリングメーカー
FLUCTに採用されているリングは、クラウゼ(Krause)社製です。クラウゼは、システム手帳用リングの製造では世界でトップクラスの技術を持つドイツの老舗メーカーです。
近年、リングメーカーの数は減少傾向にあり、いわゆる一流メーカーといえばクラウゼが主流になっています。FLUCTは、きちんとこの世界最高峰のメーカーのリングを採用しています。
ラグジュアリー感を演出するゴールド仕様
FLUCTの特徴的な点は、ゴールドのリングを採用していることです。多くのシステム手帳はシルバーのリングが一般的ですが、ゴールドにすることでラグジュアリー感が演出されています。
ギラギラして派手だと感じる人もいるかもしれません。シルバーの落ち着いた印象も確かに上品です。しかし、ゴールドでも意外といやらしさがなく、僕は気に入って使っています。職場で使用していても、いやらしいギラギラ感で目立っているということもありません。
実際の使用シーンでは、そもそも紙の方が存在感があるため、リングがギラッと見えることはあまりありません。ただし、使っている本人からすると、何というか満足感の高い、特別感のあるゴールドリングになっています。
細部へのこだわりが光る部品選択
YKK 製ジッパーという安心感
ジッパーポケットには、YKK製のジッパーが使用されています。YKKは言うまでもなく、ファスナー業界では世界最大手の日本企業です。こうした細かな部品でも、きちんとしたブランドのものを使用しているのです。
このような細部への配慮を見ると、どこから見ても金がかかっているということがよくわかります。単に革が良いというだけでなく、すべての部品において妥協のない選択がされているのです。
ノックスというブランドの位置づけ

フラッグシップ製品としての格
ノックス(Knox)は、日本のシステム手帳メーカーとして高い評価を受けているブランドです。FLUCTは、このノックスのフラッグシップ製品のひとつです。もうひとつのフラッグシップは「オーセン」という製品で、この 2 つがノックスの双璧をなしています。
FLUCTは通常 6 万円程度の価格設定ですが、時々楽天などで 2 割引きほどで販売されていることがあります。僕自身も、20%オフで楽天で売られている時に購入しました。もし気になる方がいれば、そうしたタイミングを狙ってみるのも良いかもしれません。
コストパフォーマンスではない価値
正直なところ、高価な製品であることは間違いありません。もっと安価なロロマクラシック15mmなどでも十分だと思いますし、初心者にはそちらがお勧めです。
しかし、このFLUCTには魔力とでも言うべき魅力があります。論理的に説明できない何かがあるのです。結果として、過去に数回他の手帳に浮気してみようと試みるのですが、毎回このFLUCTに戻ってきてしまいます。
デジタルからアナログへの価値観の変化
タイピング好きからアナログ派への転身
僕自身、もともとはデジタルガジェットやキーボード、タイピングが好きなサラリーマンでした。効率性や生産性を重視し、アナログなツールには懐疑的でした。
(いまでもタイピングは好きです)
しかし、最近になってアナログ手帳の良さに気づくようになりました。デジタルツールでは得られない、手で書くことの価値や、物理的なモノを持つ満足感など、新たな発見があったのです。
手帳文化の奥深さへの理解
システム手帳を使い始めてから、手帳というカルチャー全体への理解も深まりました。単なる予定管理ツールではなく、自分の思考を整理したり、アイデアを発展させたりするためのパートナーとしての側面があることがわかったのです。
FLUCTのような高級システム手帳は、そうした手帳活用をちょっと豊かにしてくれます。
値段以上の満足感と、使っているだけで気分が上がる特別感があります。
使い続けたくなる理由

所有することの喜び
FLUCTの魅力を一言で表現するなら、「所有することの喜び」に尽きるかもしれません。機能的には他の手帳でも代替可能です。しかし、この手帳を持っていることで得られる満足感は、他では味わえないものです。
職人が手作りで仕上げた革製品、世界最高峰のリング、細部まで妥協のない部品選択。これらすべてが組み合わさって、単なる文房具を超えた存在になっているのです。
継続使用に値する品質
半年間使用してきて感じるのは、品質の高さが継続使用を支えているということです。安価な手帳では、数か月使用すると革がヨレヨレになったり、リングの動きが悪くなったりすることがあります。
しかし、FLUCTは半年経っても、購入時と変わらない品質を保っています。むしろ、革の経年変化で味が出てきており、愛着は増すばかりです。これなら、数年間は問題なく使い続けられそうです。
長期的な投資としての考え方
高価なシステム手帳は、短期的に見れば確かに高い買い物です。しかし、毎日使用するツールとして、また長期間愛用できる革製品として考えれば、投資対効果は悪くないかもしれません。
何より、毎日使うものだからこそ、気に入ったものを使いたいという気持ちは大切だと思います。FLUCTは、そうした気持ちに応えてくれる製品なのです。
悪いところ
かなり気に入っているのでベタ褒めしてしまいましたが、気になる点をいくつか述べておきます。
高額である
言わずもがな、高額な商品です。
システム手帳としての機能だけであれば、10分の1の価格でも同等の機能をもつ製品は存在します。
機能に対してのコスパを求める人には向きません。
ちょっと重い
FLUCTは贅沢に革を使った手帳なので、バイブルサイズの16mmリングというスペックに対しては結構重いです。
持ち運びにおいて、1gでも軽くしたいといった人には向いていません。
これらのデメリットを踏まえても魅力が勝つと感じた方は、ぜひ試してみてほしいです。
今日は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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